体重は落ちたのに、なぜか老けて見える…減っていたのは脂肪だけじゃないかも

目標にしていた体重まで落とせた。それなのに、鏡を見ると顔がなんだかやつれて見える。久しぶりに会った人から「疲れてる?」と言われてしまった――そんな経験はありませんか?体重計の数字は確かに減っているのに、見た目の印象がむしろ悪くなっている。この矛盾には、体の中で起きているある事情が関わっています。

顔の脂肪は、皮膚を内側から支える「クッション」でした

顔の皮下脂肪は、ひとつの塊としてついているわけではありません。頬、こめかみ、目のまわりなど、複数の「脂肪コンパートメント」と呼ばれる区画に分かれていて、それぞれが皮膚を内側から押し上げるクッションのような役割を果たしています。若く見える顔にハリがあるのは、このクッションが適量あって、皮膚をぴんと支えているからです。ところが、体重を落とすと全身の脂肪が減るため、顔の脂肪も例外なく落ちていきます。「お腹の脂肪だけ落としたい」と思っても、そこだけを狙って減らすことはできません。つまり、落としたくない場所からも確実に減っていく、ということです。

こけた頬が「老け顔」に見える理由

頬やこめかみの脂肪が減ると、その下にある骨格が浮き出てきます。顔に凹凸ができると、光の当たり方によって影が生まれます。この影が、実年齢よりも老けた印象、あるいは疲れた印象をつくり出します。以前の記事で「しわが老け見えに影響しやすいのは、影という立体的な変化を生むから」という話をしましたが、頬のこけも同じ原理です。色の変化ではなく、形の変化だからこそ、印象に強く残ります。

意外な落とし穴:皮膚が縮むには3〜6か月かかります

ここが見落とされがちなポイントです。脂肪が減ったぶん、皮膚もそれに合わせて縮んでくれれば問題は起きません。しかし皮膚が新しいサイズに馴染むには、3〜6か月ほどの時間が必要だとされています。減量のペースがこの速度を上回ると、脂肪が減った後に皮膚だけが余ってしまいます。余った皮膚は重力に引かれ、たるみやしわとして現れます。「ゆっくり痩せた方がいい」と言われる理由は、根性論ではなく、皮膚の側にも追いつくための時間が必要だからなのです。

減っていたのは、脂肪だけではないかもしれません

もうひとつ、体重計では見えない変化があります。1944年にアメリカで実施された「ミネソタ半飢餓実験」という有名な研究では、被験者の脂肪量が約70%減少した一方で、除脂肪量――筋肉などの脂肪以外の組織――も約18〜20%減少したと報告されています。もちろんこれは、厳しい食事制限を長期間続けた極端な条件下での結果であり、通常のダイエットにそのまま当てはまる数字ではありません。それでも、「体重が減る」ということは「脂肪だけが減る」ことと同じではない、という事実を示しています。筋肉や、肌・髪・爪の材料になるタンパク質まで一緒に減っていれば、体重は目標どおりでも、見た目の印象は思っていたものと違ってきます。

筋肉が減ると、その後にも響きます

除脂肪量、つまり筋肉が減ることの影響は、見た目だけにとどまりません。筋肉は体の中でエネルギーを多く使う組織のひとつなので、筋肉量が減ると基礎代謝も下がっていきます。すると、ダイエット前と同じ食事量に戻しただけで、以前より体重が戻りやすい状態になります。「頑張って落としたのに、少し気を抜いたら戻ってしまった」という経験の背景には、こうした体組成の変化が関わっている可能性があります。つまり急いで落とすことは、見た目の面でも、その後の維持のしやすさという面でも、あまり有利にはたらかないということです。

ネットでよく見かける疑問です:「運動をすれば顔のこけは防げる?」

筋力トレーニングには、減量中の筋肉の減少をやわらげる効果が期待できるとされています。ただし、正直にお伝えすると、顔の脂肪そのものを運動で維持することはできません。顔の脂肪は全身の脂肪量と連動して減るためです。運動でできるのは、あくまで「筋肉を守ること」と「減量のペースをゆるやかにすること」であり、顔だけを狙って守る方法があるわけではありません。この点は、期待しすぎないほうがよさそうです。

ネットでよく見かける疑問です:「じゃあ痩せない方がいいの?」

そういう話ではありません。問題なのは減量そのものではなく、「速度」と「中身」です。短期間で一気に落とすほど、皮膚は追いつけず、筋肉やタンパク質も一緒に失われやすくなります。逆に言えば、ペースをゆるめて、材料となる栄養をきちんと摂りながら進めれば、同じ体重の変化でも見た目の結果は変わってきます。体重という一つの数字だけを追いかけていると、この違いが見えなくなってしまいます。

今日からできる工夫

・体重の減るペースを急ぎすぎない(皮膚が馴染むには時間が必要です)
・食事量を減らす場合でも、肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質源は削らない
・体重計の数字だけでなく、鏡や写真でも変化を確認する
・コラーゲンの合成に関わるビタミンCを含む野菜・果物もあわせて摂る
・紫外線対策や保湿など、これまでの基本的なケアも並行して続ける
・急激な体重の変化が続く場合や、体調に不安がある場合は、自己判断せず医療機関に相談する

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まとめ

体重は落ちたのに老けて見える。その背景には、顔の脂肪というクッションが減ること、皮膚が縮むには3〜6か月かかること、そして減っているのが脂肪だけとは限らないこと――この3つが重なっています。大切なのは、体重という数字ではなく、何がどのくらいのペースで減っているかです。落とすものと、残すもの。その区別を意識してみてください。

出典:富士在宅診療所「無理なダイエットで老ける?痩せたのに顔がこける理由と、老けにくい痩せ方」、ポノクリニック東京「急激なダイエットで目の下がこける原因」、リハビリmemo「ダイエットの成功には『筋肉量』が鍵になる科学的根拠」(ミネソタ半飢餓実験、1944年)