
健康診断で「貧血の項目は異常なし」と言われたのに、なんとなく疲れが取れない、めまいがする――そんな経験はありませんか。実はその不調の背景に「隠れ貧血」と呼ばれる状態が潜んでいることがあります。今回はこの隠れ貧血について整理してみます。
貧血と「隠れ貧血」は何が違うのか
一般的な貧血は、血液中の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の濃度が低下している状態を指します。健康診断の血液検査で「貧血」として引っかかるのは、主にこのヘモグロビン値です。一方、体には鉄を「フェリチン」というたんぱく質のかたちで貯蔵しておく仕組みがあり、鉄が不足すると、まずこの貯蔵鉄から使われていきます。ヘモグロビン値がまだ正常な範囲でも、貯蔵鉄であるフェリチンだけが先に減っている状態、これが「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」と呼ばれるものです。
なぜ通常の健康診断では見つかりにくいのか
一般的な健康診断の血液検査項目には、ヘモグロビン値は含まれていても、フェリチン値は基本項目に入っていないことが多くあります。そのため、「貧血なし」という結果が出ても、実際にはフェリチンが減っている隠れ貧血の状態である可能性は否定できません。日本鉄バイオサイエンス学会では、フェリチン値が12〜25ng/mL未満で「貯蔵鉄の減少」、12ng/mL未満で「貯蔵鉄の枯渇」とされ、後者は鉄剤による治療が必要な状態とされています。気になる方は、人間ドックのオプション検査や、内科・婦人科の診察時にフェリチン値の測定について相談してみるとよいでしょう。
隠れ貧血のサイン
隠れ貧血がある方には、疲れやすさ、めまい、立ちくらみ、足のむくみ、冷え性、イライラしやすいといった、いわゆる「不定愁訴」が見られることがあります。ただし、これらの症状は隠れ貧血以外にも、睡眠不足やストレス、他の病気が背景にあることも多く、「この症状があるから隠れ貧血だ」と自己判断で結論づけるのは早計です。気になる症状が続く場合は、医療機関で相談することをおすすめします。
隠れ貧血になりやすい原因
隠れ貧血の原因として最も多いのは月経による鉄の損失です。月経の期間中や経血量が多い場合は、それだけ鉄が失われやすくなります。また、子宮筋腫や子宮内膜症といった婦人科系の病気が背景にある場合もあります。心当たりがある方や、経血量に変化を感じている方は、自己判断せず婦人科への相談も検討してください。このほか、偏った食生活や、過度な運動習慣も隠れ貧血の一因になり得ます。厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査によると、20代から40代の女性の4人に1人(25.7%)が鉄欠乏性貧血に該当するというデータもあり、隠れ貧血まで含めるとさらに多くの女性が該当すると考えられています。
家庭でできる工夫
日々の食事では、レバーや赤身肉、あさり、しじみといったヘム鉄を多く含む食品を意識的に取り入れることが基本です。ビタミンCを含む野菜や果物と組み合わせることで、非ヘム鉄の吸収も助けられます。食事だけで十分に補いきれないと感じる場合は、サプリメントで補うという選択肢もあります。
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まとめ
「貧血なし」という健診結果だけでは、体の中の鉄が十分かどうかは分からないことがあります。隠れ貧血が疑われる場合は、フェリチン値の測定について医療機関に相談してみてください。食事の工夫を基本にしつつ、気になる症状が続くときは自己判断せず専門家に相談することが大切です。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書、令和5年国民健康・栄養調査、一般社団法人日本鉄バイオサイエンス学会 鉄剤の適正使用による貧血治療指針
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