鉄分不足と「冷え性」は関係あるのか

「靴下を重ねても手足が冷える」「夏でも指先が冷たい」――そんな冷え性に、長年「体質だから仕方ない」と付き合ってきた方も多いと思います。実はその冷えの背景に、鉄分不足が関係しているケースがあります。今回は、鉄と体温調節の関係について、仕組みと見分け方を整理します。

なぜ鉄が不足すると、体が冷えるのか

鉄は、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンの主成分です。鉄が不足すると、ヘモグロビンが十分につくれなくなり、体のすみずみまで酸素が届きにくくなります。細胞は、酸素を使ってエネルギー(熱)を生み出しているため、酸素が不足すると、体内で熱をつくる力そのものが弱くなります。特に心臓から遠い手足の末端は影響を受けやすく、「体は動いているのに指先だけ冷たい」という状態につながりやすいのです。

つまり、鉄欠乏による冷えは、血管が縮んで起こる一般的な冷えとは少し仕組みが異なります。「温める」対策だけでなく、「酸素を運ぶ力そのもの」を整えることが必要になる場合がある、という点が特徴です。実際に、鉄剤による治療で冷えの自覚症状が改善したという報告も複数あります。

血液検査で「異常なし」でも、冷えることがある

ここで注意したいのが、「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏)」の存在です。体内の鉄は、6〜7割が血液中のヘモグロビンとして使われていますが、残りは肝臓などに「貯蔵鉄」として蓄えられています。鉄が不足し始めると、まずこの貯蔵鉄から補われるため、血液検査でヘモグロビンの数値が「正常」と出ても、貯蔵鉄はすでに少なくなっている、という状態が起こります。この段階でも、冷えやだるさといった症状が出ることがあります。健診で「貧血ではない」と言われた方でも、冷えが続く場合は、この「かくれ貧血」の可能性を視野に入れる価値はあります。貯蔵鉄の状態は、一般的な健康診断のヘモグロビン検査だけでは分からず、フェリチン値という別の項目を測る必要があります。

セルフチェックの目安

以下のような症状が冷えと同時にある場合、鉄欠乏が関係している可能性が高くなります。

  • 手足の冷えに加えて、疲れやすさやだるさが続く
  • 階段や運動で、以前より息切れしやすい
  • 爪が薄くなったり、割れやすくなった
  • 顔色が悪いと言われることが増えた
  • 月経の量が多い、または期間が長い

こうした症状が重なる場合は、単なる体質による冷えというより、鉄欠乏が関与している可能性を考えてよいと思います。

冷え性の原因は、鉄分不足だけではない

一方で、正直にお伝えしておきたいことがあります。冷え性の原因は、鉄分不足だけではありません。自律神経の乱れ、筋肉量の少なさ(筋肉は熱をつくる主要な組織です)、甲状腺機能の低下、血管の収縮、生活習慣(運動不足・喫煙・食事量の不足)など、複数の要因が関わります。「冷え性だから鉄分を摂れば治る」と短絡的に結びつけるのは正確ではなく、鉄分はあくまで「関係し得る要因のひとつ」として捉えるのが適切です。

見分ける一つの目安として、鉄欠乏が関係する冷えは、冷え以外の症状(疲れやすさ、立ちくらみ、爪が割れやすい、顔色の悪さなど)を伴うことが多いとされています。冷えだけが単独で強く出ている場合は、鉄分以外の要因である可能性も考えられます。気になる場合は、自己判断せず、内科や婦人科でフェリチン値(貯蔵鉄の指標)を含めた血液検査を受けるのが確実です。

特に女性は、構造的にリスクが高い

月経のある女性は、定期的に鉄を失うため、そもそも鉄の推奨摂取量が男性より多く設定されています。加えて、無理な食事制限やダイエットは、鉄分摂取量の低下に直結します。「昔から冷え性」という方の中には、月経による鉄の損失が何年も積み重なった結果、じわじわと鉄不足が進行しているケースも少なくありません。年齢を重ねてから急に冷えを感じ始めた場合と、10代・20代から一貫して冷え性だった場合とでは、背景にある要因が違うこともあるため、経過を振り返ってみることも一つの手がかりになります。

食事からできること

対策の基本は、やはり食事です。鉄分には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や豆類に含まれる「非ヘム鉄」があり、ヘム鉄の方が吸収率が高いことが知られています(ヘム鉄10〜20%、非ヘム鉄4〜6%程度)。以前の記事でご紹介した通り、エゾシカ赤肉は100gあたり3.4mgの鉄分を含み、牛肉(2.7mg)より多く、低脂質です。「体を温めたいから、脂質の多いものを」ではなく、鉄分を軸に食材を選ぶという視点も、冷え対策の一つの引き出しになります。ビタミンCを含む食品と一緒に摂ると、非ヘム鉄の吸収率が上がることも知られているので、肉と一緒に野菜や果物を組み合わせるのも一つの工夫です。

【PR】食事に加えて、サプリメントで補うのも一つの方法です。

【PR】DHC ヘム鉄(徳用90日分):Amazonで見る / 楽天で見る / Yahoo!で見る

大切なお願い

この記事は一般的な栄養情報の紹介を目的としており、診断や治療を目的としたものではありません。冷えが強く続く場合や、他の症状を伴う場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

出典:ツムラ「冷え症にも関係する鉄分不足」、大正製薬「鉄分不足度チェック」、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

コメントを残す