「頑張っているのに記録が伸びない」——女性アスリートに多い鉄欠乏の実態

練習をきちんと積んでいるのに、最近バテやすい。記録が思うように伸びない。もしその感覚に心当たりがあるなら、それは気合いや根性の問題ではなく、鉄欠乏が関係しているかもしれません。

貧血と診断される前から、パフォーマンスは落ちている

「鉄欠乏性貧血」と聞くと、血液検査でヘモグロビンが低いと分かった状態を思い浮かべる方が多いと思います。しかし近年の研究では、ヘモグロビンがまだ正常な段階――鉄欠乏だが貧血ではない状態(IDNA:Iron Deficiency Non-Anemia)――でも、持久力が明確に低下することが分かっています。学校の健診で「異常なし」と判定されても、アスリートとしての基準では鉄欠乏に当たるケースは少なくありません。

メタ分析では、鉄欠乏によって持久系パフォーマンスが3〜4%低下し、適切な鉄補充によって2〜20%改善すると報告されています。「気合いが足りない」で片付けられてきた不調の裏に、鉄欠乏が隠れていることは珍しくありません。

なぜ女性アスリートは鉄欠乏になりやすいのか

月経のある女性は、そもそも鉄の推奨摂取量が男性より多く設定されています(15〜49歳で1日10.5mg、男性は7.5〜10mg)。さらにアスリートは、汗による鉄の喪失や筋肉量増加に伴う鉄需要の増加により、一般の人の1.3〜1.7倍の鉄が必要とされています。月経による損失と運動による需要増加が重なる女性アスリートは、構造的に鉄欠乏のリスクが高い状態にあると言えます。

症状としては、めまい、立ちくらみ、頭痛、倦怠感、動悸・息切れなどが挙げられますが、軽度のうちは自覚しにくいのも鉄欠乏の特徴です。「練習がつらくなった」「記録が伸びない」というエピソードから、後になって鉄欠乏が判明するケースも報告されています。

ヘム鉄と非ヘム鉄、吸収率の違い

鉄分には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や豆類に含まれる「非ヘム鉄」があります。吸収率は、ヘム鉄10〜20%、非ヘム鉄4〜6%程度とされ、ヘム鉄の方が体内に効率よく取り込まれます。牛もも赤身肉やレバーなどがヘム鉄を多く含む食品として知られていますが、以前の記事でご紹介したように、エゾシカ赤肉は100gあたり3.4mgの鉄分を含み、牛肉(2.7mg)を上回ります。

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鉄分だけでは片付けられないケースもある

一点、誠実にお伝えしておきたいことがあります。国際オリンピック委員会(IOC)の2023年コンセンサス声明では、RED-S(Relative Energy Deficiency in Sport:運動量に対するエネルギー摂取不足)が女性アスリートの鉄欠乏の主要な原因のひとつとされています。無月経や疲労骨折、免疫低下と同時に現れることもあり、鉄分の補給だけでは根本的な解決にならない場合があります。「バテやすい」「記録が伸びない」という不調が続く場合は、鉄分豊富な食事を心がけると同時に、一度、スポーツ医療の専門家に相談することをお勧めします。

Golden Deerとして提供したいのは、治療や診断ではなく、日々の食事の選択肢です。鉄分を効率よく摂れる食材の一つとして、エゾシカ肉を知っていただけたらと思っています。

出典:東京大学医学部附属病院女性診療科・産科「非姊娠時におけるアスリートの貧血」、日本スポーツ振興センター、IOC2023年コンセンサス声明、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」