サプリを増やしても、体調が変わった気がしない。
鉄分が足りていないと言われて、サプリを飲み始めた。しばらく続けている。でも、正直よく分からない。
そう感じている方は、少なくないと思います。
そして同時に、こう思っている方もいるはずです。
「でも、摂りすぎもよくないんでしょう?」
実はこの「摂りすぎ」の考え方が、2025年に変わりました。今日はその話です。
よくある自己解釈
サプリを飲んでも変わらないとき、多くの方はこう考えます。
「量が足りないのかもしれない」「もっと吸収のいいものに変えたほうがいいのかも」「そもそも自分には効かない体質なのかも」
そして、量を増やす方向に考えが向きます。
一方で「増やしすぎて害があったら怖い」という気持ちもある。増やしたいけれど、怖い。この板挣みで止まっている方も多いと思います。
体には、鉄の「受付係」がいます
ここからが本題です。
鉄には、ほかの多くの栄養素と違う、少し変わった性質があります。
体は、鉄の吸収量を自分で調節しています。
その調節をしているのが、ヘプシジンというホルモンです。
体の中の鉄が足りているとき、ヘプシジンが増えて、腸からの吸収にブレーキをかけます。逆に鉄が足りないときは、ヘプシジンが減って、吸収しやすい状態になります。
つまり、口から入れた鉄がそのまま全部体に入るわけではありません。受付係が「今日はこれくらいで」と量を決めているようなイメージです。
だから、足りている人が量を増やしても、吸収されずに素通りしていく部分が出てきます。「増やしたのに変わらない」という感覚には、こういう背景があることもあります。
2025年、鉄の「上限」が消えました
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」は、5年ごとに改定されます。この中には、多くの栄養素に「耐容上限量」という数字が設定されています。これ以上摂ると健康を損なう可能性がある、という目安です。
2020年版では、鉄にも耐容上限量がありました。成人男性で1日50mg、成人女性で40mgです。
ところが2025年版では、この耐容上限量の設定が見送られました。年齢を問わず、鉄には上限の数字が置かれていません。
理由として説明されているのが、まさに先ほどのヘプシジンです。
鉄の吸収に関わる遺伝子などに異常がない場合、食事から摂る鉄が多くても、ヘプシジンによる調節で吸収量が正常な範囲に保たれる。そのため過剰による障害のリスクは無視できる、という報告があること。加えて、胃腸の症状を除くと、鉄の摂りすぎと健康被害の量的な関係がはっきりしないこと。この2つが挙げられています。
ここを誤解しないでください
ただし、これは「いくら摂ってもいい」という話ではありません。ここは強調させてください。
同じ基準の中で、次のようにも書かれています。
医療機関で鉄剤を出されている場合などを除いて、推奨量を大きく超える鉄の補給には合理性がなく、健康障害が生じる可能性がある。そして、鉄が不足していない人が摂取量を増やしても、貧血の予防にはつながらない。
上限の数字が消えたのは「安全だと分かったから」ではなく、「量と害の関係を数字で線引きできるだけの根拠が、現時点では揃っていないから」です。意味がまったく違います。
また、胃腸の症状は除外されていません。鉄のサプリを飲んで胃がむかむかする、便が黒くなる、便秘や下痢が起きる、といったことは実際に起こります。これは上限が消えたこととは別の話です。
「変わらない」理由は、鉄以外にもあります
ここも大切なので触れておきます。
サプリを飲んでも体調が変わらないとき、原因は鉄の量とは限りません。
・そもそも鉄が不足していない(だから増やしても変わらない)
・鉄は足りていて、だるさの原因が別にある(睡眠、甲状腺、ストレスなど)
・どこかで少しずつ出血していて、入れる以上に失われている
・飲むタイミングで吸収が妨げられている
とくに1つ目は、意外と多いと考えられています。「疲れやすい=鉄不足」と考えて自己判断でサプリを始めたものの、そもそも不足していなかった、というケースです。
だるさが続くとき、いちばん確実なのは、量を増やすことではなく、いまの自分の状態を測ることです。
家庭でできること
そのうえで、日々の食事で意識できることを挙げておきます。
・レバー、赤身の肉、あさり、しじみなど、吸収されやすいヘム鉄を含む食品を、ビタミンCのある野菜や果物と組み合わせる
・食事中と食後すぐの緑茶、紅茶、コーヒーは、少し時間をずらす
・朝食を抜かない
・「増やす」より「毎日切らさない」を意識する
最後の1つが、今回の話の実践部分です。体が受け取る量を自分で決めている以上、一度にたくさん入れるより、必要なときに必要な分がある状態を保つほうが理にかなっています。
ネットでよく見かける疑問です
Q. 上限がなくなったなら、サプリを増やしてもいいですか
A. おすすめしません。鉄が不足していない方が増やしても、貧血の予防にはつながらないとされています。胃腸の症状も、上限の話とは別に起こります。
Q. 自分が足りているかどうか、どうやって分かりますか
A. 血液検査です。健康診断のヘモグロビンだけでは、貯蔵鉄(フェリチン)が減り始めた段階は見つかりません。気になる場合は、医療機関でフェリチンまで測ってもらえるか相談してみてください。
Q. 鉄のサプリで胃が気持ち悪くなります
A. よくあることです。自己判断で量を調整する前に、医療機関に相談してください。飲むタイミングや種類を変えることで楽になる場合もあります。
Q. 子どもに飲ませてもいいですか
A. 大人用のサプリを自己判断で子どもに与えるのはやめてください。子どもの栄養は、まず食事の工夫から。心配な場合は小児科にご相談ください。
※ここからは商品の紹介を含みます
毎日の食事だけでは難しい、という方向けに、吸収されやすいヘム鉄のサプリメントもあります。ただし今回の記事の通り、足りている方が増やしても意味はありません。まずご自身の状態を知ったうえで、必要であれば選択肢のひとつとして考えてみてください。
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まとめ
・体は鉄の吸収量をヘプシジンというホルモンで調節している。入れた分だけ入るわけではない
・2025年版の食事摂取基準で、鉄の耐容上限量は設定が見送られた(2020年版は男性50mg、女性40mg)
・ただしこれは「いくらでも摂っていい」という意味ではない。不足していない人が増やしても貧血の予防にはならず、胃腸の症状は別に起こる
・だるさが続くときは、量を増やす前に、いまの状態を測る
体調が続けて気になるときは、自己判断せず、医療機関にご相談くださいね。
出典
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(耐容上限量 男性50mg/女性40mg)
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