学校の健康診断では「異常なし」だった。それなのに、顔色がすぐれない、すぐ疲れたと言う、部活の記録が伸び悩んでいる――そんな様子が気になったことはありませんか?健診で問題なしと言われると、つい安心してしまいます。ただ、ここには知っておいた方がよい前提があります。学校の健診では、そもそも貧血を調べていない可能性が高いのです。
学校健診の必須項目に、血液検査は入っていません
学校で行われる健康診断の項目は、学校保健安全法施行規則という国のルールで定められています。そこに挙げられているのは、身長・体重、栄養状態、脊柱や胸郭・四肢の状態、視力、聴力、眼や耳鼻咽頭・皮膚の疾病、歯や口腔、結核、心臓、尿、その他の疾病および異常の有無です。この一覧を見てお気づきかもしれませんが、血液検査は含まれていません。つまり「学校健診で異常なし」は、「貧血がない」ことを意味しないのです。
ちなみに、2016年度からは「座高」と「寄生虫卵検査」が必須項目から外れ、代わりに「四肢の状態」が加わりました。健診の内容は時代とともに見直されており、保護者世代が受けた健診と今の健診は同じではありません。
では、貧血検査をしている学校はどのくらい?
必須ではないものの、独自に貧血の血液検査を実施している自治体・学校もあります。日本学校保健会が平成25年度に実施した調査では、規則に定められた項目以外として保護者の同意を得て貧血検査を行っている学校は、全学校種で21.6%と報告されています。単純に言えば、およそ5校に1校です。逆に言えば、多くの学校では血液での貧血検査は行われていないことになります。
ただしこの数字は10年以上前の調査であり、現在の実施状況とは異なる可能性があります。また、実施の有無は自治体や学校によって大きく変わります。ですので「うちの子の学校ではやっているのか」を確かめるのが確実です。保健だよりや健診の案内を見返す、あるいは養護教諭の先生に直接尋ねてみるのが早いと思います。
学校健診で「わかること」もあります
血液検査がないからといって、健診が無意味なわけではありません。毎年記録される身長と体重は、成長曲線として並べたときに初めて意味を持ちます。以前は伸びていた身長の伸び方が急に鈍った、体重の増え方が変わったといった変化は、体調の変化を映していることがあります。また、内科検診では医師がまぶたの裏側(眼瞼結膜)の色を見ることがあり、ここが白っぽい場合は貧血が疑われます。
ただし、目で見る観察には限界があります。軽度から中等度の貧血では見た目に変化が出にくく、この方法だけで判断するのは難しいとされています。「健診で何も言われなかった」ことを、貧血がない証拠として受け取らない方がよい理由がここにあります。
血液検査をしても、見落とされるものがあります
ここがもうひとつのポイントです。仮に学校で貧血検査が行われていたとしても、多くの場合はヘモグロビン値を測る検査です。しかし体内の鉄は、血液中のヘモグロビンとして使われる分と、肝臓などに「貯蔵鉄(フェリチン)」として蓄えられる分に分かれています。鉄が不足し始めると、まず貯蔵鉄から取り崩されるため、ヘモグロビン値はしばらく正常のまま保たれます。
この「ヘモグロビンは正常だが貯蔵鉄は減っている」状態が、いわゆる隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)です。子供は自分の不調を言葉にしにくく、疲れやすさや集中力の低下があっても「そういう性格」と受け取られてしまうことがあります。潜在的な鉄欠乏の段階でも、注意力や集中力、学習面に影響が及ぶ可能性が指摘されています。
思春期は、鉄の需要が重なる時期です
特に注意したいのが中学生前後の時期です。この時期は体が急速に大きくなるため、血液量そのものが増え、鉄の必要量が増加します。そこに女子であれば月経が始まり、定期的に鉄を失うようになります。さらに部活動で運動量が多ければ、発汗による損失や、足の裏への衝撃による赤血球の破壊(溶血)も加わります。増える需要と、増える損失。この二つが同時に来るのが思春期です。
ネットでよく見かける疑問です:「心配なら病院で調べた方がいい?」
気になる様子が続くのであれば、小児科で相談するのが確実です。その際、ヘモグロビン値だけでなくフェリチン値まで測ってもらえるか、聞いてみるとよいと思います。ただし、受診するかどうかを含めて医師の判断になりますので、「必ずフェリチンを測るべき」と決めつけて臨むのではなく、気になっている症状を具体的に伝えることを優先してください。
また、貧血を疑う前に確認したいこともあります。疲れやすさや顔色の悪さは、睡眠不足、部活の負荷、成長期特有の体調の波、風邪など、貧血以外の原因でも起こります。「元気がない=貧血」と決めつけず、あくまで可能性のひとつとして捉えてください。
家庭でできること
子供の鉄分については、サプリメントではなく食事から考えるのが基本です。大人用の鉄サプリメントを自己判断で子供に飲ませることは避けてください。鉄は摂りすぎると体に負担がかかる栄養素であり、必要かどうかの判断と量の設定は医師に委ねるべき領域です。
・レバー、赤身肉、あさり、しじみなど、吸収率の高いヘム鉄を含む食品を取り入れる
・ビタミンCを含む野菜や果物と組み合わせて、非ヘム鉄の吸収を助ける
・食事中や食事の直後の緑茶・紅茶・コーヒーは、タイミングをずらす
・朝食を抜かない(1食抜けると、その分の鉄を取り返すのは意外と難しくなります)
・成長曲線を家庭でも記録しておくと、健診結果を見比べる材料になります
見落とされがちな「お母さん自身」の鉄分
お子さんの体調に気を配っていると、自分自身の食事は後回しになりがちです。月経のある女性の鉄の推奨量は10.0〜10.5mgと、決して低い数字ではありません。子供の健診結果を心配するあまり、気づけば自分の鉄分摂取が不足していた、というのはよくある話です。
【PR】食事だけで十分に補いきれないと感じる場合は、用量が管理されたサプリメントを大人自身の補助として選ぶのもひとつの方法です。
まとめ
学校健診の必須項目に血液検査は含まれておらず、「異常なし」は「貧血がない」ことを意味しません。独自に貧血検査を実施している学校もありますが、すべてではなく、地域差があります。まずは、お子さんの学校で貧血検査が行われているかどうかを確認してみてください。そのうえで気になる様子が続くようであれば、自己判断せず小児科に相談を。健診は万能ではありませんが、成長曲線という有用な情報も残してくれています。何がわかって何がわからないのかを知っておくことが、見落としを減らす第一歩になります。
出典:学校保健安全法施行規則(e-Gov法令検索)、公益財団法人日本学校保健会「平成25年度 学校生活における健康管理に関する調査 事業報告書」、学校保健ポータルサイト「変わる学校健診 『運動器』を追加、座高・寄生虫卵は削除」、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
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